米中の貿易摩擦は、中国の輸出ビジネスに大きな打撃を与えています。
いままで中国と親密だった国々が、第二次トランプ政権後、次々と態度を変えています。
韓国やベトナムをはじめとする東南アジア諸国も、すでに独自の規則を制定、取り締りを強化しています。
米国は、中国は関税を回避するために、今までも第三国を利用して米国に商品を輸出してきたと指摘。
ベトナムが明確な例です。米政府高官は関税が低くなる「メイド・イン・ベトナム」のラベルを貼った中国製品が米国に送られていることに懸念を表明。
2018年、中国はベトナムに839億ドル(約12兆円)相当の商品を輸出、そして2024年には、倍の1440億ドル(約21兆円)に跳ね上がりました。
そして同じ時期、ベトナムから米国への輸出は490億ドル(約7兆円)から、1960億ドル(約28兆円)にまで増加していました。
迂回輸出の発生源となっている国名は挙げていませんが、ベトナムの輸入の40%近くは中国からのものであり、
米国は、中国が米関税を回避するためベトナムを迂回輸出拠点として利用していると非難しているのです。
そしてトランプ大統領は相互関税としてベトナムに46%の関税を賦課。90日間停止される中、両国は交渉を開始することで合意しました。
ロイターによると、こうした状況を受けベトナム商工省は、原産地証明書のチェックを強化、
商品の原産地偽装や、違法な迂回輸出を厳しく取り締まるよう通達を出したという事です。
ベトナムは米国に対し、ベトナムを経由して米国に輸送される中国製品の管理を強化することを約束。
トランプ政権から課せられた、46%という高い関税の回避に向け米国に働きかけています。
4月21日、韓国の関税庁は、アメリカの関税措置を回避するために生産地を韓国と偽って、
韓国経由で輸出される外国製品の取締りを強化すると発表しました。
韓国・関税庁によりますと、生産地を偽った中国などの製品の輸出は以前から多数確認されており、
去年11月には韓国製と偽った中国製のマットレスが、韓国経由でアメリカに輸出されたとして、関税庁が関係する倉庫などに調査に入りました。
また、今年1月には中国人が韓国に設立した企業が、中国産のバッテリーの材料を輸入、
包装や表示を変え、韓国製と偽り、アメリカに輸出した例もあったということです。
韓国メディアは関税庁の話として、トランプ政権が中国に対して合わせて145%の関税を課したことで、
今後、韓国を経由して生産地を偽装する例が増えるとみられると伝えていて、関税庁は取締りを強化する方針だという事です。
またタイでも、中国からの米国への輸出の抜け道として利用されることを避けるため、法律を改正。
対策には、原産地証明書の透明性を高め、輸出品の検査を強化することが含まれています
さらにタイは米国の関税政策に従い、太陽光パネル、鉄管、電動自転車など49品目を輸入禁止品目に指定、
現在では生産者に対し、原産地証明書を発行する前に、それらの製品が実際にタイ製であることを証明するよう義務付けています。
中国の人々の多くは、米中関税戦争による影響を過小評価。米国との取引は中国の総輸出入の約14%ほどを占めるに過ぎず、表面上に大きな問題ではないと考えています。
しかし、トランプ大統領が第一次政権時、2018年から4段階に分けて最大で25%の追加関税を賦課して以来、
すでに膨大な数の製造メーカーが、生産拠点を東南アジアに移しています。
これは、米国に輸出している多くの中国メーカーが将来、操業停止に追い込まれる可能性を示唆、
仮に東南アジアに工場を移転した後も同様に、操業停止のリスクに直面することを意味します。
米中貿易戦争が緩和されなければ、中国の多くの輸出業者にとって倒産する選択肢しか残っていません。
米中関税戦争の、一番の被害者は「世界の工場」と呼ばれる中国南部の広東省・東莞市(とうかん-しの人々かもしれません。
東莞市はスマートフォンからゴム草履まで、約1万4000社の中規模から大規模の様々な工場があり、その約60%が輸出に依存、中国をけん引してきました。
アナリストは、米国による対中輸入製品への関税措置が長期化すれば、中国の中小工場は閉鎖を余儀なくされ、
中国ですでに起こっている深刻な失業問題に、さらなる追い打ちをかけることになるだろうと言います。
さらなる問題は、これらの企業が生き残るため、輸出から国内市場へと、方向を転換せざるを得なくなっていることです。
内需向けの小さな工場は、中規模から大規模の企業とシェアを争い、倒産または共倒れになる可能性もあります。
そして今後、中国にとって関税よりもさらに深刻な問題があります。それは、他国からの受注が永久に失われる可能性があるという事です。
すでに高い関税のために、中国製品は価格面で優位性を失っています。その為、米国の企業は現在、ベトナムやインドなどの国に目を向け始めました。
アメリカのIT大手、アップルのティム・クックCEOは1日、トランプ政権による関税措置の影響を避けるため、
「今期、アメリカで販売されるiPhoneのほとんどはインドが原産国となる」と明らかにしました。
ティム・クックCEOは、トランプ政権による関税措置の影響により、今年第1四半期に約9億ドル(約1300億円)のコスト増を見込んでいると発表。
利益は予想を上回ったものの、関税によってサプライチェーンに混乱が生じているというのです。
関税戦争によって、アップルなどの大企業がインドやベトナムなどへの工場移転を行った場合、
今まで中国が請け負っていた注文は海外に移され、今後、中国に戻ることはありません。
インドは2024年度、約4000万から4300万台のiPhoneを製造、世界生産の18%-20%はインドで生産されていたという事実があります。
すでにアップルは、主に米国市場向けに、インドでのiPhone組み立てを約10%増やす計画です。
アップルは第1四半期末時点で、標準モデルのiPhone15および16に加え、16 Proラインのインド生産を本格化させました。
従来、アップルの米国向け製品の多くは中国製でしたが、地政学的リスクや関税問題を回避する動きを強めたのです。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、関係者の話として、アップルが米国に輸出する年間6000万台超について、
26年末までに全て、インドからの調達に切り替える目標を立てていると伝えました。
アップルは長い間、世界の工場として中国に大きく依存。
アップルだけでも、中国で直接的および間接的に300万人以上の雇用を創出していると推定されています。
ロイターの報道によれば、すでにアップルはiPhoneの組み立てを請け負っている台湾・鴻海精密工業(ホンハイせいみつこうぎょう傘下のフォックスコンやタタと協議を行っているといいます。
中国政府は関税による「外部ショック」に対処するため、巨大な自国市場を活用して輸出企業を支援する方針を示しました。
中国商務省は18日の声明で、「国内市場は対外貿易企業にとって強力な後ろ盾になる」と説明。
しかし、米国市場での喪失分を国内消費で補うのは容易ではありません。
中国では企業の景況感や消費者心理がなお不安定で、労働市場も弱く、支出に慎重な人も多いといいます。
さらに、一部業界では過剰生産能力が激しい価格競争を招き、中国経済に対するデフレ圧力を強めています。
輸出業者はすでに中国のSNSを通じ、米国の買い手が発注をキャンセルし在庫が膨らんでいると、海外販売品の大幅値引きに乗り出し、それを宣伝している状況です。
かつて「世界の工場」と称された中国は、今やその地位を急速に失いつつあります。
第三国を経由した迂回輸出、生産拠点の海外移転、そして国内市場へのシフトといった動きは、
中国経済が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。
中国は、このまま外の圧力を「一時的なもの」と見なして目を背けるのか、それとも変化に柔軟に対処するのでしょうか?
あなたはこの変化が、今後の中国、そして世界にどのような影響を与えるとお考えでしょうか?
最後に、この記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。
また次回の記事でお会いしましょう!
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