12月22日午前8時頃、中国・遼寧省で、瀋陽地下鉄・11号列車が、倒壊したタワークレーンに衝突しました。
この衝撃で列車の窓が割れ、ドアが変形、列車の前部に深刻な損傷が発生しました。
幸い脱線事故は免れたものの、先頭車両は大破し緊急停止、現場は混乱し、乗客はパニックに陥りました。
しかも緊急停止後に、乗客はそのまま取り残され、自力で脱出する際に高圧電線による感電の危険に直面しました。
偶然、現場を目撃した人々はこの瞬間をビデオに収めSNSに投稿、脱出後、取材に応じた人は九死に一生を得たと表現しました。
事故の映像では、工事の為に設置されていた、巨大なクレーンのアームが線路に倒れ、
運行中の列車に衝突、先頭車両が大破され、列車の通行が完全に遮断されている様子が映っています。
巨大なクレーンアームが衝突したため、一時辺りは多くの粉塵に覆われ、事故現場の緊迫した模様が伝わってきます。
中国メディアの報道では、列車のドライブレコーダー映像から、クレーンから伸びて吊り上げられる荷物を支える長いアーム状の構造物、
「クレーンブーム」が何らかの原因で線路側に倒れ、落下したことが事故の直接の原因であるとしています。
クレーンブームが落下し始めた直後、運悪く接近してきた列車は停止する余裕もなく、前部が正面から衝突しました。
赤いクレーンブームは列車と衝突後、高架プラットフォームから落下、電力供給線やその他のインフラを次々と破壊、
切断された電線がショートし、パチパチと音を立て火花が飛ぶ様子が分かります。
中国のオンラインで共有された画像には、列車の屋根が剥がれ、壊滅的な状態となった列車の先頭車両が映っています。
事故により電力供給を行う接触電線架線網が切断、外部の壁は大きく破壊され、5メートル以上の隙間ができましたが、
中国当局の発表によれば、幸いにも、この事故による死傷者はいないとの事です。
この日の午後、地元メディアのジャーナリストが列車に乗っていた男性にインタビューすることが出来ました。
彼は「最初、突然の爆発音を聞きました。その後、列車に乗っていた誰もが、すぐに列車が何かに衝突した事に気づきました。
その後、私は慌てて、この一部始終を動画に収めようと必死でした。」と語りました。
男性の説明から、事故時の緊張と恐怖が伝わってきます。
この事故は朝のラッシュ時に発生、その後、多くの列車の運行が中止され、多くの通勤客が駅で立ち往生しました。
しかし、事故に遭った列車に乗っていた乗客たちは、更に過酷な状況が続いていました。
列車は50分間、暖房が入らないまま停止、車内は冷え切ったままで、何のアナウンスもされませんでした。
ようやくドアが開くと、運行スタッフが乗客を誘導、線路に沿い狭い通路を通り、近くの駅まで歩かせたという事です。
しかも、一列での移動しか許されず、列車を降りて、駅に着くまでに20分かかりました。
事故現場を通り過ぎると、クレーンが線路を損傷し、線路が壊れた橋のようになっていた。
事故から7時間が経過した午後3時ごろ、損傷した列車はようやく、工事車両によって現場から牽引、撤去されました。
上海・地下鉄運行センターは、線路の影響を受けていた部分に重大な損傷があり、運用にかなりの混乱があったと報告。
経済的損失の程度は、いまだ不明ですが、衝突の規模を考えると、負傷者がいなかったのは不幸中の幸いでした。
中国メディアの報道によれば、クレーンを設置した建設会社が事故の全責任を負うことになるだろうという事です。
その後のメディアの取材で、この事故は偶然起きたわけではなく、建設会社のずさんな管理がもたらした結果である事が明らかになりました。
現場近くで工事を行っていた別の業者から当局に対し、クレーンが危険なほど、線路に近い位置で操作されていると、
何度も報告があったにもかかわらず、何の措置も取られませんでした。
上海地下鉄・11号線での、この衝撃的な事故は、中国における列車運行業務に関する安全に重大な懸念をもたらしました。
12月21日夕方、広東省・広州駅で、女性が高速列車のドアに挟まれたまま、数メートル引きずられる事故が発生しました。
女性が列車に引きずられる様子を見た、ホームの人々が驚き叫び声を上げ、鉄道職員がすぐに無線で列車に通報、
ようやく列車は緊急停止し、女性は救助され、そのまま病院に運ばれました。
直接の原因は、女性が誤った列車に乗り、急いで乗り換えようとした際、挟まれたことでした。
しかしアナリストの中には、中国の高速列車の設計が、この事故の一因になったとのではないかと考える人もいます。
アナリストは、この高速列車は2つの列車が連結されていましたが、ドアのセンサーは繋がっていなかったと言います。
この事故は、中国・高速列車における監視システムの不十分さ、そして緊急対応の遅さ、
さらには乗客に対する安全注意喚起が、徹底されていないなどの問題を浮き彫りにしました。
これは30年ほど前に起きた、東海道新幹線史上初の旅客死亡事故、1995年「三島駅乗客転落事故」を思い起こさせます。
駆け込み乗車をしようとした高校生が、指を挟まれたまま、ホームを約90m伴走したのちに転倒、
約160m引きずられた後、線路に転落し、尊い命を落としてしまいました。
この事故を教訓に、新幹線では0系を含め全車両の戸閉め装置の改造が行われ、
戸閉め力が落とされたほか、気密押さえ装置が動作する速度もに引き上げられました。
また、ホームに従来からあった列車非常停止警報装置を、業務専用から一般旅客も取り扱うことのできるボタンへ切り換え、
三島駅を含む新幹線の駅で安全柵やホームドアを設置、駅構内の監視カメラを増設すること等の対策がされました。
中国の高速列車は外見上、日本の新幹線とあまり変わらないように見えますが、その中身はまるで30年前の新幹線のようです。
中国の都市鉄道では、脱線、衝突、火災などの事故が頻繁に起こり、広く社会の関心を集めています。
都市鉄道システムが急速に拡大するにつれて、運行安全の確保が差し迫った問題となっている。 4月には、西安地下鉄10号線の試運転中に事故が発生。
中国の都市交通システムは急速に拡大していますが、運行上の安全を確保することが差し迫った問題となっています。
月18日、陝西省(せんせいしょうの西安地下鉄(せいあんちかてつ10号線の試運転中に事故が発生、列車の前面と車両が大きく損傷、死傷者が出る大惨事となりました。
西安地下鉄10号線の建設は2020年7月に始まり、全長34.4キロメートル、全面運行は2024年後半の予定でした。
画像は一時ソーシャルメディアで拡散されましたが、当局の指示によりメディア報道やSNSの投稿はすぐに削除されました。
アナリストたちは透明性の欠如を非難、ある人はこのような隠蔽は事故自体よりもさらに不安を募らせると述べました。
確かにこのような事件が隠蔽されれば、国民の恐怖は増すばかりです。
世論の圧力を受けた中国当局は4月21日、西安地下鉄10号線の事故に関する報告書を発表。
報告では、4月18日午後12時頃、試験路線での車両試験中に、地下鉄会社・職員の運転ミスにより追突事故が発生、職員1人が死亡、2人が負傷したと述べました。
昨年10月13日午後8時40分ごろ、広東省深セン市の地下鉄12号線の懐徳駅(フェドクえき)近くで、電車が走行中に突然激しく振動、車両の連結部分が変形しました。
電車は、緊急停車、乗客が懐中電灯を持った乗務員の誘導でトンネルを歩いて同駅まで避難しました。
乗客が撮影した映像には、列車が激しく揺れ、車両の連結部分が変形している様子が映っています。
乗客によると激しい振動は30秒から1分続き、車両の揺れは大きく歩けないほどで、叫び声を上げる乗客もいたといいます。
そして2カ月後の2023年12月14日午後6時52分、北京地下鉄昌平線(ペキンちかてつしょうへいせんの、
西二旗駅 (せいにきえき)から生命科学園駅 (せいめいかがくえんえき)までの区間で、
一時停止した先行車に後続車が追突する大事故が発生しました。
この事故で、500人以上の乗客が病院に搬送、130人が骨折するなど多数の負傷者が出ましたが、死者はいなかったとの事です。
報道によれば、経済的な損失は約950万8000元(日本円で約2億円)に上るといいます。
当局の事故調査チームは、事故の直接的な原因は地下鉄運営会社の準備・対応の不十分さだったと結論。
「当時の運行指令員は線路の“渋滞”が完全に排除できない状況で、後続車の制限を解除し、
かつ後続車の運転士に先行車の一時停止を知らせなかった。
また、後続車の運転士は手動で走行中にシステムから減速を促されたが直ちにブレーキをかけなかった。
その後ブレーキをかけたが降雪の影響でスリップし制動距離が延びたため追突事故につながった。」といいます。
現場の映像には激しい衝突後の様子が映っており、車両間の連結部がひどく変形、多くの窓が割れているのが分かります。
一部の乗客は誘導を待たず、列車の窓を割ったり、線路沿いに歩いて脱出を試みました。
しかし中国の鉄道に詳しいアナリストによれば、北京地下鉄事故の正確な原因は別にあるといいます。
アナリストは、中国が自国開発した「列車集中制御装置(CTC)」の不具合によって、前の車両の緊急ブレーキの後、
坂を下っていた後部の列車は、ブレーキをかけず、前方の列車に衝突したと可能性が高いと話しています。
しかし当局は列車集中制御装置の不具合を認めず、代わりに、運行会社に責任があるとしたというのです。
中国全土では、自国開発した列車制御システム以外に、外国のシステムに依存している路線もありますが、
北京地下鉄昌平線は、中国が自国開発したとする「列車集中制御装置(CTC)」を運用していました。
中国の列車制御システムとは、欧州列車制御システム(ETCS)を参照して中国鉄道が構築、
中国鉄道の実際の運用モードと組み合わせ、交通管制技術によって国産化された、技術システムです。
中国の国営メディアによれば、国産の列車制御システムは輸入システムより20%以上コスト削減、
列車の運行間隔を短縮でき、故障率も低いと主張しています。
しかし中国国内でも以前から、自国の列車制御システムに対する懸念が高まっています。
2011年9月27日、中国最大の経済都市・上海市の中心部を通る地下鉄10号線で、列車同士の追突事故が発生。
この事故では日本人2人を含む271人が負傷、同市内の病院に搬送され、そのうち約20人が重傷を負いました。
当時、朝日新聞が地下鉄の関係者らの話として伝えたところによると、
駅周辺で故障が発生したため、手動の信号によって運行を続けていたという事です。
事故車は速度を落として運行していましたが、前方に別の車両が停まっているのに停止できなかったようです。
この事故から2カ月前の、2011年7月に浙江省温州市で40人が死亡した高速鉄道の衝突・脱線事故、
(2011年温州市鉄道衝突脱線事故)も同様の原因で発生しています。
その後の調査でこの事故は、LKD2-T1型・制御システムに重大な欠陥があり、
故障発生後の輸送指令の処理にミスがあったことが原因であると判明しました。
当日、制御システムが落雷で故障し進行信号のまま区間が閉塞したため、D3115列車が緊急ブレーキで停車。
また、制御システムのミスで目視走行モード(時速20キロメートル以下での徐行)に切り替えることが出来ず、
立ち往生したにもかかわらず、後方では進行信号が表示されていました。
また、落雷による故障で輸送指令と停車したD3115の連絡が途切れ、現場の状況を把握できなかったのも原因でした。
わずか2か月で、2011年・温州市鉄道・衝突脱線事故と、上海地下鉄10号線の事故が発生、合わせて483人もの死傷者を出しました。
この死傷者の数は驚異的であり、中国のアナリストは当局が公共の安全を無視していると非難、
以前から中国の技術の質に疑問を呈しています。
また、人々の生活の質への影響を考えず、急速な発展を盲目的に追求することの危険性を指摘する人もいます。
日本は過去の事故から学び、安全対策を徹底してきました。
中国の鉄道も、日本の経験を参考に、より安全なシステムを構築していく必要があります。
しかし、多くの事故映像は、中国の鉄道が抱える問題が依然として深刻であることを示しています。
あなたは、日本の鉄道と中国の鉄道の未来について、どのようなことを考えますか?
最後に、この記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。
また次回の記事でお会いしましょう!
コメント