【話題】まるでホラー映画のワンシーン？中国で密かに存在する“ゾンビカー”の実態とは
皆さま、今回は中国のネット上で話題となっている、非常に興味深い“ある種類の車”についてご紹介させていただきたいと思います。その存在は、日常生活の中ではほとんど目にすることがありません。しかし、ある特定の時期になると、高速道路や街中に突如として姿を現すのです。その車こそ、通称「ゾンビカー」と呼ばれる存在です。
■ 年にたった1～2度だけ動き出す車たち
この「ゾンビカー」という名称は、まさにその特徴を表現しています。普段はまるで姿を消したかのように人目に触れることはありませんが、春節（旧正月）や国慶節など、多くの人々が帰省する長期休暇のタイミングになると、まるでホラー映画の一場面のように突如として動き出すのです。
彼らの車は、普段は埃まみれになり、苔が生え、泥でドアが固まって開かないこともあるほど長期間放置されています。中には5年以上も動かされていない例もあり、まさに「ゾンビ」のような状態と言えるでしょう。
■ なぜ車を放置するのか？ゾンビカーのオーナーたちの事情
では、なぜこのような車が存在しているのでしょうか？実は、その背景には多くの中国人が抱える生活スタイルと社会的な価値観が深く関係しています。
多くの「ゾンビカー」の所有者は、大都市で働く地方出身者です。彼らは春節や大型連休など、年に1～2度の帰省のためだけに車を所有しています。都市部では通勤や移動にはタクシーや地下鉄を利用するため、自家用車を運転する機会はほとんどありません。また、都市では駐車場の確保が困難であることも、放置の一因となっています。
それでもなお、彼らが車を所有し続けるのには、大きな理由があります。それは「見栄」や「プライド」という感情です。故郷の村に帰る際に「都会で成功し、自分の車を持つことができた」という証を示したいという気持ちが、多くの人々を突き動かしているのです。
■ 動かさないことで生まれる車の劣化と危険
車は本来、定期的に走行させなければ機械としての性能を保つことができません。エンジンやバッテリーは劣化し、タイヤも変形しやすくなります。しかし、ゾンビカーは年に数回しか動かされないため、こうしたメンテナンスの問題が常につきまといます。
しかも、運転の頻度が極端に少ないことから、オーナーたちの運転技術にも不安が残ります。中には、高速道路で時速50キロでのんびりと走行したり、サイドミラーを開けずに車線変更をするなど、非常に危険な運転をする人もいると言われています。こうした運転が原因で、後続車との接触事故が発生することも少なくありません。
あるユーザーは、「村に着くと、誰にも気づかれたくないのか、車を溝に停めて隠している人もいる」と話しており、所有したいという願望と、見せびらかしたくないという葛藤が見え隠れします。
■ ネットで話題に…皮肉と共感が交錯する「ゾンビカー」論争
この“ゾンビカー”現象に対して、ネット上ではさまざまな声が上がっています。
「運転免許試験にお金さえ払えば合格できるという噂があるが、そんなドライバーが道路を走るのは本当に危険だ」といった真剣な意見から、「慣らし運転すら終わっていないのに、すでに廃車寸前」といった皮肉交じりのコメントまで、多種多様な見解が見られます。
あるユーザーは冗談交じりにこう述べています。
「ゾンビカーの特徴は、駐車は大胆、バックは目をつぶり、カーブでは使命感に燃えてスピードアップ、ワイパーで方向転換し、サイドブレーキを踏みながら運転する。ブレーキは使わない。まるで運転セオリーを無視した芸術だ。」
一見ジョークのように聞こえるこのコメントも、実際にこのような車やドライバーを見た経験がある人にとっては、リアルな共感を誘う内容となっているようです。
■ 車は「ステータス」の象徴？背景にある“面子”の文化
こうした現象の根底には、中国社会に根強く残る「面子（メンツ）」文化があると指摘する専門家もいます。社会的地位や成功を、車という“物”で象徴しようとする心理が、過剰なローンや無理な車の所有に繋がっているのです。
たとえば、あるネットユーザーは次のようなエピソードを紹介しています。
月収約5000元（日本円で約10万円）の男性が、頭金ゼロのローンで高級車・メルセデス・ベンツCクラスを購入。しかし、2ヶ月後には毎月のローン返済3000元（約6万円）とガソリン代1000元（約2万円）で生活が立ち行かなくなり、食費すらままならなくなったとのこと。現在、その車はSNS上で売却を試みているそうです。
これは極端な例かもしれませんが、同様の苦しみを抱える人は決して少なくないと考えられています。
■ 放置された車がもたらす社会的な問題
問題は個人の経済事情だけに留まりません。放置された車は、地域の交通環境にも深刻な影響を与えています。
ある村では、通行料徴収のためにゲートポールが設置された際、以前まで無料で駐車されていたおよそ20台の車が、何者かによって一斉に傷つけられる事件が発生しました。オーナーが状況を把握していないまま車を放置していたことが、トラブルの火種になったのかもしれません。
また、都市部の地下駐車場に何年も放置されている車は、スペースを無駄にし、他の利用者との摩擦を引き起こす原因にもなっています。
■ 最後に…ゾンビカーから見える“見栄”と“現実”のギャップ
「車は社会的ステータスの象徴」と考える人は多く、特に地方出身で都市部に出てきた人々にとって、それは「成功の証」なのかもしれません。
しかし、その車が実際には動かされず、手入れもされず、かえって危険や迷惑を生む存在になっているとしたら、それは本末転倒と言わざるを得ません。交通手段であるべき車が、いつの間にか「所有すること自体」が目的となってしまっているのです。
「人からよく見られたい」「周囲と同じように見られたい」——そんな素朴で切実な願いが、時に現実とのギャップを生み、人々を苦しめているようにも感じられます。
皆さまはどう感じましたか？
今回ご紹介した「ゾンビカー」について、皆さまはどのような印象をお持ちになりましたか？このような現象が今後さらに増えるのか、それとも社会の意識の変化とともに減少していくのか……。
ぜひ、皆さまのご意見やご感想をコメント欄にお寄せください。今後もこのような社会現象に注目し、皆さまと共に考えていければと思います。
コメント