昨年、中国のSNSに、走行中のBYDのプラグインハイブリッドSUV「唐DM-i」が、突然、飛び出してきたトラックを避けようと、
急ハンドルを切ったところ、道路わきの電柱に激突、車が炎上し運転手が命を落としたという、衝撃的な動画が拡散されました。
衝突後、恐ろしいことに、車のドアはロックされたまま解除できず、閉じ込められた運転手は、助けを求めて叫びながら亡くなったという事です。
事故当時、後部座席に座っていった運転手の妻は、幸い窓を割って救出されましたが、原因は特定されていないという事です。
中国のSNSユーザーによれば、当初、閲覧可能だった事故の関連動画はインターネット上から、すべて削除されているとの事です。
削除前に拡散された映像には、父親を亡くし、泣き続ける子供を、母親が慰めている悲痛なシーンも映っています。
アナリストによれば、中国のオンライン上で、BYDを批判することは、国そのものを批判することと同義だと言います。
その為、BYDを購入し故障の問題に直面した被害者は、様々な抑圧に直面、SNSで不満を述べる動画が拡散されています。
あるBYDのオーナーは「私は2023年にこのBYDを購入、それから1年近く経過したころ、運転中に異変に気付きました。
車を停め、恐ろしい事実が判明しました、なんとブレーキペダルが外れかかっていたのです。
詳しくみると、ネジが抜け落ちていることが分かりました。これは高速道路上で起こった、実際のブレーキペダルの状態です。」
2024年にBYDは、前年比41.26%増となる427万台のNEV(新エネルギー車)BEVとPHEV(プラグインハイブリッド車)を販売、
3年連続で新エネルギー車販売で世界No.1を達成しました。
そのうち、42万3375台のNEVを輸出しており、自動車生産を開始してから30年で、この数値を達成するのは驚異的です。
しかしアナリストによれば、中国の車メーカーは、いずれも歴史が浅く、様々な問題が露見していると言います。
ある修理工場のオーナーの投稿したビデオを見てみましょう。
彼は「最近、オンラインで真実を話すことはできません。真実を投稿すると、中国車を中傷していると非難されるからです。
これは、2014年の中国ブランドの車と、2013年の海外のブランドの車です。どちらがより錆びやすいでしょうか?
これは、2013年製の海外メーカーです。内部の頑丈な鋼鉄を見てください。これは事故車ですが、まったく錆びていません。
では、2014年製造の中国ブランドを見てみましょう、僅か10年足らずで、ドア、屋根、ネジまで酷く錆びています。
ひどい状態です。中国ブランドは、海外よりずっと先を進んでいると自慢していますが、そのような主張をする前に、まず錆を直す事です。
また、中国のある自動車アナリストは最近、動画を投稿、中国メーカーの敏感な問題に触れました。
「中国の自動車メーカーに対する私の気持ちは複雑です。もちろん、彼らが成功することを心から願っています。
もしかしたら、トヨタやフォルクスワーゲンに代わって、世界トップの自動車メーカーになるかもしれません。
そうでなくても、少なくとも韓国の起亜を越えて、第3位になるでしょう。しかし、このままでは残酷な結果になるでしょう。」
2024年12月、アナリストが心配したように、中国の自動車メーカーにとって痛手となる、世界的なスキャンダルが発生しました。
中国のEV最大手のBYDが、ブラジル北東部のバイーア州カマサリ市で進めていた新工場の建設が、
現地の政府機関の命令により中断したことが明らかになったのです。
バイーア州の労働監督当局は、2024年12月23日、複数の関係機関で組織した合同調査チームが、
BYDの工場建設現場に立ち入り調査を行い、163名の建設作業員が「奴隷同然」の劣悪な環境で働かされていたと発表。
これらの作業員を保護し、ホテルに移送するとともに、BYDおよび工事の請負会社に対して工事の停止を命じたのです。
ブラジル当局の発表によれば、163名の建設作業員は、BYDから工事を請け負っていた中国の建設会社、
金匠建設集団のブラジル法人に雇用され、工事現場内の4つの宿舎に居住していました。
調査チームが、労働者の宿泊施設を撮影した映像では、ベッドにはマットレスさえなく、
板にシーツをかぶせただけの状態で、労働者は劣悪な環境で働かされていたとみられています。
調査で判明した劣悪な労働環境が全面的に改善されるまで、当局は工事再開を認めないとしています。
ブラジル工場の建設中断は、BYDにとって思わぬ痛手です。
BYDは2023年7月、カマサリ市に総額30億レアル(約767億円)を投じ、年間生産能力15万台の乗用車工場を建設すると発表。
ブラジル市場だけでなく、中南米市場を本格開拓するための戦略拠点に位置づけるとしていました。
今回の“事件”を受け、BYDブラジル法人のシニア・バイスプレジデントを務めるアレクサンドレ・バルディ氏は、
「BYDはブラジルの法律、中でも労働者の権利と尊厳を保護する法律を完全に順守する。それを改めて約束する」とコメントを発表。
また、この問題に関して中国外務省の報道官は25日の記者会見で、
現地の中国大使館などがブラジル側と連絡を取り合い状況を確認しているとして
「中国は一貫して労働者の権利と利益の保護を重視し、中国企業に対しては法律や規則に基づく経営を求めている」と述べました。
昨年BYDは、ある男性を名誉毀損で告発、男性は公に謝罪せざるを得ませんでした。
彼は「私の名前はチャオ・ジンロンです。BYDと、その販売店に心から感謝したいと思います。
BYDのおかげで、錆びた部分を塗り直し、リアテールライトを交換し、その他の部品3つを交換してもらいました。
保証対象であることを知らなかったので、次の個所は先に支払いました。
3つの座席、エアコンのコンプレッサー、うるさいシャフト、何度か手を切った魅力的な内装トリムも交換しました。
最も時間がかかったのは、錆びた右の後部ドアを塗り直し、錆びて貫通した左の後部ドアを交換したことです。」
だから私は、本当に感謝するべきなのでしょう。」と語っています。
BYDに対する批判の抑制は、自社の車を購入した後の、メンテナンスに対する独占的支配にまで及んでいます。
中国では、一般的にBYDの正規ディーラーでの修理費用は、高額だと報じられており、
また個人の修理工場は複雑さと法的リスクを理由に、BYDのEVを避けることが多いといいます。
報道によると、BYD自動車の所有者が、個人の自動車工場に、修理費として5000元(日本円で約11万円)を支払ったところ、
工場の技術者が、BYD社からバッテリー管理システムを改ざんしたとして告発され、懲役6ヶ月の判決を受けたという事です。
個人で修理工場を営む技術者2人は、特定のEVメーカーのバッテリー管理システムが衝突後にロック、動かなくなることを発見。
このロックを解除するには、BYD正規ディーラーでの、コストと時間のかかる手順が必要だったため、
自動車所有者からの要望に応え、技術者たちはBYD車、2台のバッテリーシステムのデータを改変、動けるようにしました。
しかしこれはすぐにメーカーの知る事となり、BYDは勝手にデータ収集を歪曲、
車両の安全性を損なったとして、技術者2人を告発したといいます。
その後2人は逮捕、懲役6ヶ月の他、修理で得た金額である5000元(日本円で約11万円)の罰金を言い渡されたとされています。
中国の自動車アナリストは、購入者は、車の修理については事実上、認定のサービス工場に頼らざるを得ず、
独立した修理工場の仕事が今後、消滅するのではないかと危惧しています。
また中国のEV所有者の一部の人々は、これが前例となり、認定工場以外で行われた場合の定期メンテナンスが犯罪になるのではないかと懸念しています。
BYDは中国政府による世界戦略の、重要な役割を担ってきましたが、その強引な戦術は中国国内でも物議を醸しています。
同社は、下請けのサプライヤーに圧力をかけ、容赦ないコスト削減で価格競争を煽っているというのです。
BYDの新エネルギー車は現在、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカに急速に拡大しており、
中国メディアはしばしば、BYDをテスラと肩を並べたと賞賛、いつかアメリカのEV大手を追い抜くと自慢しています。
しかし、米国、カナダ、欧州連合などの国々は、次々と中国製・新エネルギー車に高額の関税を課すことで対応してきています。
そしてBYDは、以前は安定していたアジア市場でも、補助金が減り、激しい価格競争で、かっての勢いが衰えつつあります。
急速な成長を遂げているBYDですが、今回の事件や労働問題など、様々な問題が浮上しています。
もしあなたがBYDの車を購入していたとしたら、今回の事件を知って、どのような気持ちになったでしょうか?
最後に、この記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。
また次回の記事でお会いしましょう!
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