2024年12月12日、中国内陸部の湖北省荊州市で、制御不能となった大型ドローンが体育施設に墜落、炎上しました。
中国のSNS上では「飛行機が落ちたのでは」との声が上がるほど、黒煙が大きく立ち上る動画が次々と投稿。
当局によりますと、12日午前11時10分ごろ、現場近くの企業が、飛行機のような翼を持つ固定翼ドローンの試験飛行をしていたところ、
突然ドローンが制御不能となり、その後、構造物にぶつかり、墜落・炎上したということです。
現場となった、荊州スポーツセンターではその後、ドローンから出火した炎による火災が発生、
破片が至る所に散乱しましたが、消防により3時間ほどで、ようやく火は消し止められました。
湖北省・荊州消防当局は「この事故により負傷者1人が治療を受けており、事故原因は調査中」と発表しました。
12月7日、湖南省・瀏陽市(りゅうよう-し)で、花火のパフォーマンスとドローンテクノロジーが組み合わされた素晴らしいショーが行われました。
まるで空に星のゲートが開き、無数の流星が宇宙を横断し地球に落ちてきたような、SF的な世界が拡がりました。
また上海市・外灘(ワイタンでは、孫悟空が金色の杖を持ってパフォーマンスするような、ドローンショーで海外の観光客を驚かせました。
9月26日の夜には、広東省・深センで「天空の城、大いなる可能性」というテーマで、深セン国慶節オープニングドローンショーが開催。
合計10,197台のドローンが同時に飛び立ち、「1台のコンピューターで制御されたドローンの同時離陸数最多」と
「ドローンフォーメーション数最多」の2つのギネス世界記録を打ち立てました。
近年、ドローンショーは中国の主要都市で、以前にも増して人気が高まっています。
しかしアナリストたちの多くは、このブームは、現在の中国における深刻な社会的、経済的問題を隠すために行っている、国家主導の虚栄心に満ちたプロジェクトだと批判しています。
実際、中国のドローンショーでは、多数の事故が起きていますが、国内メディアで報道されることはほとんどありません。
12月8日、中国の著名な現代アーティスト蔡國強(さい・こっきょう)氏による大規模なドローンショーが、
同氏の故郷である福建省・泉州市(せんしゅうしで開催されました。
何千ものドローンと、低空花火のコラボで視覚的に印象的なパフォーマンスは、
泉州の豊かな歴史、伝統文化、女性の役割をテーマとしていました。
白と黒の煙の軌跡を伴う浮遊する船や、金色に近い輝くオレンジ色から
紫色へと色を変えながら薄明かりの中に消えていくドローンで形作られた帆船が登場しました。
ショーの開始時、観客は熱心に見上げ、ドローンの同期した動きを賞賛していました。
しかしドローンが突然制御を失い、空から落ち始めると、群衆はパニックになり、急いで避難しようと混乱が起きました。
落下したドローンは地面にクレーターを作ったり、そのいくつかは近くの海に墜落しました。
参加した観衆の方たちの話によれば、ドローンの墜落によるけが人は出なかったものの、ショーの一部が中断されたとのことです。
またこの事故の原因は現在も調査中との事。
大胆な芸術表現で知られる蔡氏は、観客に落下したドローンを拾うのを手伝うよう求め、持ち帰らないよう呼びかけました。
このイベントに登場したドローンは高価で、報道では1台あたり10000元(日本円で約21万円)を超える可能性があるとの事です。
今回のショーには2000台のドローンが参加、そのうち1000台以上が墜落したと推定されおり、
ドローンの損失だけでも、21万円 × 1000台 で 2億1000万円にものぼります。
幸い、けが人はいませんでしたが、機体だけで2億円以上の損失があり、
もし落下によって人や物に損害を与えてしまった場合は、さらに賠償責任が発生する可能性があります。
企画したチームによると、突然の天候の変化がドローンに悪影響を及ぼしたとのこと。
風が強くドローンのバッテリーが消耗が激しくなり、ショーを続行するために当初のドローンとは別の機種に交換することにしました。
しかし担当者は、交換したドローンの機種を地元・航空管制局に報告する事を忘れていた為、
正体不明のドローンとして、当局から妨害電波を受けた可能性があるとの事です。
アナリストによると当日は、濃霧のためドローンの高度や距離の判断が困難であり、
当局が妨害電波を発生させる範囲を特定できず、多くのドローンが一斉に墜落した可能性があるとしています。
しかし、多くの観客が押し寄せるショーの最中、特定できないドローンに対し妨害電波を照射する
当局に対し人々はSNSで苦情を述べています。
そしてこの事件はドローンショー業界に全体に警鐘を鳴らし、墜落した際の火災や爆発などの安全上の危険性を浮き彫りにする結果となりました。
中国のドローンショーでは、過去にも重大な事故がいくつか起きています。
2023年8月11日の夜、広東省・東莞市(とうかん-しの動物園で行われたドローンショーでは、約100機ものドローンが突然制御を失い墜落、ドローンは大破しましたが、幸い負傷者はいませんでした。
2022年の国慶節の夜に福建省・福州市(ふくしゅうしで行われた大規模なショーでは、
開始から数分以内で、多くのドローンが制御を失い落下、イベントは突如中止されました。
現場のビデオでは、制御不能になったドローンが落下、車に衝突、人々は逃げまどいました
翌日の報道によると、この事故はオペレーターのミスが原因で、約10機のドローンが墜落したといいます。
2018年4月、陝西省(せんせいしょう・西安市では、当時の世界記録樹立を目指したドローンパフォーマンスが開催されました。
13174機ものドローンが離陸したものの、ミスが頻繁に発生、いくつものドローンが墜落し、この試みは失敗に終わりました。
アナリストたちに衝撃を与えたのは、このショーの総額が2800万元(日本円で約5億8800万円)であると発表され、それがすべて中国政府の補助金によって賄われたことでした。
中南財経政法大学(ちゅうなんざいけいせいほうだいがくの教授で、湖北省・統計局元副局長のイェード・シン氏は、
中国の各自治体にある市政宣伝工作部には、都市イメージ促進と、観光開発のための特別資金があると語りました。
しかし、シン教授は、果たしてドローンショーに、数億円の政府資金を費やす価値があるのだろうかと述べています。
中国では各地で、ドローンパフォーマンスが一般的になってきたことで、国民が飽きてしまう可能性もあります。
また、ドローン、特に飛行高度の範囲が広い大型ドローンは、飛行経路と重なる可能性があり、衝突の危険があることにも注意が必要です。
ドローンは、主にプラスチックで出来ていますが、大容量のリチウム電池、金属配線、回路基板、モーターが含まれ、
航空機のジェットエンジンに吸い込まれると、火災や爆発を引き起こす可能性があり「バードストライク」よりもはるかに危険です。
近年、中国では空港や飛行機の近くで、ブラックフライングと呼ばれる、関係当局に登録または承認されていないドローン飛行が多発しています。
9月11日夕方、天津浜海国際空港(てんしんひんかいこくさいくうこう)は、無許可ドローンによるフライト時刻が乱れが発生した発表。
同空港はドローンの干渉により、11日の午後7時からすべてのフライトを停止、翌日の午前6時頃にフライトを再開しました。
更に、同空港は9月12日夕方にも、別のドローンによるフライト時刻の乱れが発生、午後10時頃にフライトを再開しました。
中国は世界最大の民間ドローン輸出国であり、ドローン特許出願の約70%を占め、この分野で世界をリードしています。
米国防総省は、2022年、国家安全保障上の懸念と、中国政府がこれらの技術を軍事目的で利用する可能性があるという懸念を理由に、
中国のドローンメーカーを、中国・軍事企業と関係のある企業のリストに含めました。
今年10月、世界最大の民生用ドローンメーカーである、中国・DJI(ディー・ジェイ・アイDJIは、
同社が中国の軍事企業として分類されるのは誤りであると主張、米国防総省を提訴しました。
12月10日のロイターの報道によると、DJIのドローンは、米議会下院で今週中に採決予定の年次軍事法案で、
米国市場での新規ドローン(無人機)の販売を禁止される可能性があるとしています。
この法案はDJIまたは、オーテル・ロボティクスのドローンが、安全保障上のリスクをもたらすかどうか、
1年以内に判断することを、国家安全保障当局に義務付けています。
過去2か月間、謎のドローンが米軍施設の上空を飛行しているのが目撃され、アメリカ国民の懸念を引き起こしています。
12月9日、連邦捜査局(FBI)は、カリフォルニア州・ヴァンデンバーグ宇宙軍基地の上空でドローンを飛ばし、スペースXのロケット発射台を撮影したとして、中国人の男を逮捕しました。
起訴状によると、11月30日、ヴァンデンバーグ宇宙基地の探知システムは、基地上空を1時間近く飛行、高度約1.6キロメートルに達したドローンを追跡していました。
この事件は、2023年の中国気球事件を思い起こさせます。
2023年2月1日、米国とカナダの国防当局により、中国の偵察用気球と思われる気球が発見、大統領指示の元、撃墜されました。
中国ではドローンショーの華やかさの裏で、制御不能による墜落事故や安全性の問題が改めて浮き彫りになる出来事が相次ぎました。
華麗なパフォーマンスで人々を魅了する一方で、巨額の費用や安全管理、そして軍事利用への懸念など、様々な課題も抱えているドローンショー。
今回の動画を通して、皆さんはどのように感じたでしょうか?
華やかなドローンショーの映像に魅了された一方で、事故の映像や関係者の証言からは、
安全管理の難しさや巨額の損失といった課題も見えてきたかと思います。
あなたはドローンショーのエンターテイメント性とその裏に潜むリスク、このバランスをどのように考えますか?
またドローンの軍事利用や情報漏洩のリスクについて、どのように考えていますか?
最後に、この記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。
また次回の記事でお会いしましょう!
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