【現代中国の新しい結婚のかたち】急増する“ドライマリッチ”とは?背景にある社会の変化とその影響を探る
皆さま、こんにちは。
今回は、近年の中国社会において急速に広まりを見せている「ドライマリッチ」と呼ばれる結婚の形態について、丁寧にご紹介しながら、その背景にある社会的・経済的な要因や今後の影響について深掘りしてまいります。
◆ ドライマリッチとは?その特徴と広がり
「ドライマリッチ(Dry Marriage)」という言葉をご存じでしょうか?
この言葉は今、中国で注目を集める新しい夫婦のあり方を指しています。法的には婚姻関係にありながら、実際にはお互いに独立した生活を営み、まるで“独身者同士が同居している”かのような距離感を保つ結婚スタイルです。
ドライマリッチは、上海のような大都市圏から始まり、今では地方都市へと急速に広がっているとされており、中国の新しい結婚観を象徴する現象の一つといえるでしょう。
このような夫婦は、感情的なつながりや親密さがほとんどなく、お互いの生活に干渉せず、それぞれの時間や空間を大切にする関係を築いています。まるで“ルームメイト”のように生活するその姿は、従来の夫婦像とは大きく異なります。
◆ 家庭内別居との違いとは?
日本でも「家庭内別居」という言葉がありますが、ドライマリッチと似て非なる点があります。
家庭内別居は、夫婦関係が悪化した結果として、同じ家に住みながらも心のつながりを失い、それぞれが距離を保った生活を余儀なくされているケースが多いのに対し、ドライマリッチは最初から感情的な関係を求めず、合理性や独立性を重視して生活スタイルを選択する傾向が強いのです。
このような関係性は、愛情よりも経済的な安定や実利を優先する「戦略的な結婚」として捉えることもできるでしょう。
◆ 契約結婚のような実態
ある有名なオンラインメディアが紹介した記事によれば、ドライマリッチを選択した92組のカップルが、結婚前に非常に詳細な金銭契約を交わしていたそうです。
その内容は、財産の所有権の明確化から、生活費の分担、将来的な育児費用の割り当てに至るまで、ビジネス契約よりもさらに綿密に取り決められており、結婚というより“離婚に備えた協定”とも言えるような様相を呈していました。
◆ 実際の生活例:徹底した分業と冷めた関係
たとえば、ある若い夫婦のケースでは、寝室も別々、さらには家事の担当まで共有カレンダーアプリで管理し、誰が猫のトイレを掃除したか、誰が動物病院へ連れて行ったかまで、エクセルのようなシートに記録していたというのです。
一見すると効率的に見えるその生活は、まるで時計のように正確に動いているかのようでしたが、そこには温もりや愛情といった要素はほとんど見られず、非常にビジネスライクな関係性が浮かび上がっています。
◆ 社会現象としての広がりとその理由
ある調査によると、上海においてドライマリッチを選ぶ夫婦の割合は2025年までに15%に達すると見られています。これはもはや少数派ではなく、社会現象としての広がりを示す明確な証拠でもあります。
ドライマリッチが広がる背景には、都市部での生活の厳しさや、若者の精神的・経済的な疲弊があると指摘されています。感情的なニーズが二の次にされ、物質的な要求を優先せざるを得ない現代社会では、結婚とはもはや感情の結びつきではなく、現実的な選択肢の一つとなっているのです。
◆ 女性の自立と価値観の変化
さらに注目すべきは、現代の中国において、女性の自立が急速に進んでいるという点です。
多くの女性が職場で成功を収め、もはや結婚相手に経済的に依存する必要はなくなり、自分らしい人生を歩もうとする傾向が強まっています。こうした価値観の変化が、ドライマリッチや未婚選択の増加を後押ししているとも考えられます。
◆ 経済的プレッシャーと結婚のハードル
住宅ローンや生活費の高騰、結婚費用の莫大さもまた、若者たちの結婚意欲を削ぐ大きな要因です。
ある調査では、中国における結婚式の費用は5つ星ホテルで行う披露宴だけで約300万円から340万円、日本円にして約420万円以上かかるケースもあり、若いカップルが家の購入や結婚式にかけるお金は、両親の退職金をも使い果たすような高額に上ることもあるといいます。
◆ 結婚を“しない”という新たな選択肢
こうした現実を前に、そもそも「結婚そのものを選ばない」という若者も増加しています。
37歳の独身女性は、自らの意思で結婚も出産もせず、10年以上一人暮らしを続けており、「結婚しても本当に求めているものは得られない」と語ります。彼女のように、経済的に自立した女性たちが、自らの選択で独身を貫く時代が到来しているのです。
◆ 統計から見る現代の結婚事情
中国民政部の2024年のデータによれば、婚姻届け件数は約610万6000件、離婚件数は262万1000件に上り、離婚率は42.9%に達しています。
結婚件数が減少傾向にある一方で、離婚率が高止まりしているという現実は、現代の結婚がいかに不安定なものになっているかを物語っています。
◆ 社会全体への影響と課題
ドライマリッチは、個人だけでなく家族、そして社会全体にさまざまな影響を及ぼしています。
例えば、感情的な疎外が続くことで精神的なストレスが蓄積し、うつ病のリスクが高まる可能性もあると専門家は指摘します。さらに、そうした関係の中で育つ子どもは、心理的な問題を抱える可能性が高くなるという研究結果も存在します。
社会全体で見れば、出生率の低下や高齢化の加速という重大な課題に直結しており、これまでの価値観では対処しきれない問題が次々と表面化しているのです。
◆ 結びにかえて
このように、現代中国で進行する“ドライマリッチ”の広がりは、単なる一時的な流行ではなく、深刻な社会構造の変化を映し出す現象と言えるでしょう。
皆さまは、このような結婚のかたちや背景にある社会の変化について、どのように感じられましたか?ぜひ、コメント欄にて皆さまのご意見をお聞かせいただければ幸いです。
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