2025年3月28日、ミャンマー中部でマグニチュード7.7の大地震が発生、
この地震で、隣国であるタイと中国との間で、思わぬ「余震」が起こっています。
震源地から1000km以上も離れたバンコクで建設中だった33階建て、高さ137メートルのビルが、わずか5秒で倒壊してしまったのです。
3月30日、タイのペートンタン・シナワット首相は、現場視察を行った後、
「マグニチュード7.7の大地震が発生したが、わが国ではどの建物も無事で済んだ。
たった一つの例外を除いてだ!」と、怒りに満ちた表情で述べました。
彼女が強調した「たった一つの例外」は、中国が誇る国有企業の「中鉄十局」が建設し崩壊したビルなのは言うまでもありません。
そして、このビルは、同社にとって最も高いビルであるだけでなく、海外で初となる、超高層ビルプロジェクトでした。
しかし、中国が自慢していた超高層ビルは、ほぼ完成していたにもかかわらず、わずか数秒で瓦礫の山に変わったのです。
3月31日時点で、バンコク市政府は、この倒壊により11人が死亡、33人が負傷、79人が行方不明になったと報告。
現地情報によると、事故当時、現場には約300から400人の作業員がおり、そのほとんどは中国国籍で、
実際の死傷者は、公式発表よりはるかに多い可能性を示唆しています。
懸命な救助活動の裏で、中国企業関係者の行動は世界にさらなる衝撃を与えました。
中国「中鉄十局」は、救助に協力するどころか、地震発生翌日の29日、
現地スタッフを立ち入り禁止区域エリアに侵入させ、関連書類を持ち出させたのです。
中国でも、ミャンマーで大地震が発生したことは、連日伝えています。
隣国で起こった「天災」だけに、マンダレーに取材チームを派遣したりして、むしろ日本での報道よりも多いくらいです。
しかし、隣国タイで起こった「人災」については、中国では沈黙したまま。
事故発生時にはいくつかの記事が出ましたが、関連情報が中国系プラットフォームから完全に削除されています。
これらの行為は、事件の背後に憶測を呼び、証拠の隠蔽が目的ではないかとの疑惑を引き起こしました。
3月29日、公共放送タイPBSは、タイ首都圏警察が、3月28日に発生したミャンマーの大地震の影響で首都バンコクで倒壊した建設中の高層ビルを巡り、
中国人の男4人が跡地に不法侵入し、工事の関連書類を持ち出していたことを明らかにしたと報道。
タイ・メディアの報道によると、地元警察は一般市民から通報を受け、現場近くで4人の男を逮捕したという事です。
さらに、うち1人は、プロジェクトディレクターを名乗り、正規の労働許可証やパスポートを所持していたといいます。
持ち出された書類は、建設請負業者や下請け業者に関する文書、一般工事検査通知書など32件で、
これらの書類は建物の崩壊原因を調査する上で極めて重要とみなされており、分析のためにその場で押収されました。
タイPBSの報道によると、逮捕された4人は警察署の尋問に対し「保険金請求のため、書類を持ち出した」と供述しているという事です。
警察が行った初期捜査の後、男たちは一時的に釈放されました。しかし、事件はまだ終わっていません。
タイ当局は、現地の法律に基づいて4人を起訴する準備を進めていることを明らかにしています。
ビル崩壊後、さらに衝撃を与えたのは、中国「中鉄十局」が昨年末に行った、ビル完成を祝う記事をすぐに削除した事です。
中国の建設会社「中鉄十局」は、2024年4月に公式SNSで、すでに主要構造の完成を祝う写真を投稿。
しかし、地震でタイで建設中のビルが倒壊した直後、中国当局は建設の進捗状況はわずか30%であると報告しました。
そして、タイ・メディアが、中国のSNSでビル建設プロジェクトに関する情報を検索しようとしたところ、
ビルの崩壊とともに、
ニュース報道、建設期間中の写真、同社に関する中国メディアの宣伝記事など、ほぼすべての情報が消えていました。
更に現在、中国「中鉄十局」は、自社のホームページを閉鎖。まるでプロジェクト全体が存在しなかったかのように痕跡は残されていません。
しかし、この隠蔽戦術は、SNSでさらなる嘲笑を呼ぶだけでした。
ある人は「中国企業は、「豆腐のようにすぐ倒れる手抜の「おから工事」の建設だけでなく、証拠を消したり、列車を隠したりすることにも長けており、そのスピードと手法は驚異的だ。」と冗談交じりに投稿しました。
タイにある他の高層ビルは、地震で大きな揺れに見舞われましたが崩壊せず、どの建物も無事で済んみました。
しかし、中国「中鉄十局」が建設したビルは、一瞬にして崩壊。この鮮明な対比は建物の構造的欠陥を浮き彫りにしています。
中国政府は関連するオンラインコンテンツをほぼすべて取り上げることに成功しましたが、
国際的な批判や、タイ国民の怒りが広がるのを防ぐことはできません。
崩壊したビルは、中国国営企業・中国鉄道工程グループ(CREC)の子会社「中鉄十局」のタイ現地法人と、
イタリアン・タイ・デベロップメント(ITD)の合弁会社「ITD-CREC」が受注。
2020年の競争入札で21億4000万バーツ(約90億5233万円)の建設契約を獲得、同年末に着工。タイの会計検査院の、新庁舎として使われる予定でした。
このプロジェクトは、「中鉄十局」がこれまでに海外で行った、最も超高層、最大の建設プロジェクトであると言われています。
特筆すべきは、この会社が、習近平主席が2013年に唱えた「一帯一路」構想の中核を担ってきたことです。
すでに同社はベラルーシ、ベネズエラ、南スーダン、ウガンダ、ケニア、スリランカなどで、インフラ整備のプロジェクトを行ってきました。
専門家によれば、建物崩壊の直接的な原因は、設計と建設という2つの主要な側面に分けられるいいます。
高さ137メートルの33階建てのビルは、梁のない柱だけで支えるフラットスラブ構造を採用しおり、
従来のフレーム構造に比べて耐震性が低いフラットスラブ構造が、倒壊の大きな要因の一つになったと指摘。
専門家は、この構造は梁がなくなり、高い空間効率を提供する一方で、地震に対しての課題を指摘しています。
皮肉なことに、その後SNSユーザー達は、「中鉄十局」が以前に、ネット上に発表した記事を発見しました。
記事では、同社のフラットスラブ構造は、大きな地震の場合、従来と比較して耐荷重性が30%以上向上すると述べられていました。
この自画自賛は、わずか5秒で崩壊した同社ビルの映像を見ると、今ではむなしく感じられます。
しかし業界アナリストは、この構造設計は比較的成熟しており、設計や施工方法の改善では信頼性も高いため、今回、倒壊が起きたすべての原因ではないといいます。
アナリストは、本質的に中国のプロジェクトでは、利益を最大化するため、標準以下の材料を使用しながら
コストの削減を図り、プロジェクトにかかる建設期間を人為的に短縮、建設効率の向上に重点を置いていると言います。
中国では長年、「おから工事」が横行、その多くは「中鉄十局」のような中国・国有企業によるもので、
建物が倒壊しない限り、プロジェクトは完了したものとみなされます。
しかし今回、地震が少ない国として知られていたタイで、予期せず地震が発生。
建設中だったで建物が倒壊、企業側からすれば、ついに命運が尽きたと言えるでしょう。
タイ、地震活動が活発な地域ではありません。
しかし、タイ地震研究センターのペンヌン・ワーニッチャイ理事長によれば、バンコクは、
泥炭や微細な粒子を多く含む軟弱地盤のため、地震の震度を3~4倍に増幅させる特徴があると言います。
同理事は、地質条件を考慮し、耐震対策を最適化していなければ、建物は遠方の地震波の共鳴によって容易に耐力を失うだろうとも述べています。
海外の専門家の情報によると、倒壊した建設中の国家会計検査院ビルは、地震により倒壊した高層ビルの中で、世界で最も震源地から離れ、また地震で倒壊した建物で、世界で最も高いビルだったと語っています
タイメディアが3月31日に報じたところによると、エーカナット工業大臣は、建物の残骸の初期調査の結果、
「一部に基準強度を下回る、低品質の鋼材が使用されていたことが判明した。」と述べました。
さらにタイ工業省関係筋は「チャトゥチャク区で建設されていた会計検査院ビルの崩落現場から採取した構造材を
クロントイ区のタイ鉄鋼研究所で調べたところ、昨年12月に閉鎖された中国系工場(ラヨン県)で製造されていた鋼材であり、
その品質が基準に達していなかったことが判明した」と指摘。
崩壊した会計検査院ビルの建設が始まる前の、2020年に施工業者が、
中国人経営の同工場から入手していた可能性が高いといいます。
エーカナット工業大臣は、鋼材の状態を見てショックを受けたと認め、
基準を満たさない材料では地震の際にエネルギーを効果的に吸収できず、建物が崩壊しやすくなると指摘しました。
また、タイ王立工学会のメンバーであるキッジャパット・プーヴォラワン氏は、
「鉄骨構造はビルの基盤において重要な要素ですが、崩壊の原因はそれだけではありません。
建設設計やセメントの品質など、他の要因も関与している。」とし、
「特にセメントの品質を重点的に検査すると考えている。」と述べました。
タイ・カセサート大工学部のアモーン・ピマンマ教授は「資材の品質が低く、耐震性を十分考慮していなかった可能性がある。
耐震基準などの見直しが必要だ」と指摘。
タイの技術者らで構成する「エンジニア協会」のスチャチャウィー・スワンサワット元会長は
「調査に際し、日本のような知見がある国に助言を求めるべきだ」と述べました。
一部のユーザーはXで、建物が崩壊した原因は揺れが遠方に届きやすい「長周期地震動」の影響だと分析しています。
しかし、バンコクでは、他の高層ビルが倒壊しなかったことから、地震は単なる誘因に過ぎず、建物自体に問題があったは明らかです。
崩壊後に記事をすぐに削除したことは、問題を隠そうとする姿勢を示している事に他なりません。
また「中鉄十局」の過去の実績に基づくと、彼らは建設効率を過度に重視する傾向があります。
タイの汚職監視団体の責任者は30日、反汚職当局から問題を指摘されていたとロイターに語りました。
崩壊したビルは、中鉄十局・現地子会社の合弁会社が2020年に着工し26年完成予定でした。
しかし、公共事業を監視する団体ACTの責任者によると、当局は今年1月、作業が著しく遅れているとして建設会社に契約解除を警告したといいます。
監視団体は、プロジェクトの完成を急がせようと、基準を満たさない資材を使用、建設品質が軽視された可能性があると指摘しています。
地震後、バンコクのチャチャート・シッティパン都知事は、なぜこのビルだけが倒壊したのかと尋ねられました。
都知事はメディアに対し、崩壊の正確な原因はまだ不明であるが報道陣に「大きな被害は全て建設中の現場だ」と強調、詳細な調査が必要になると語りました。
3月30日、タイのペートンタン・シナワット首相は、現場視察を行った後、
「マグニチュード7.7の大地震が発生したが、わが国ではどの建物も無事で済んだ。
たった一つの例外を除いてだ!」と、怒りに満ちた表情で述べました。
シナワット首相は、「建物の崩壊によって死者が出たうえ、タイの国際的な評価にも影響を及ぼした」と指摘、
「事故の経緯を国民と国際社会に明らかにする」と強調。
さらに、「バンコク市内のすべての建築物は法的基準を順守しなければならない」と述べ、安全対策の徹底を求めるとしています。
今回の動画では、ミャンマー大地震が引き起こした、タイでの衝撃的なビル倒壊事故、
そしてその背後に見え隠れする中国企業の対応について深く掘り下げました。
地震という自然の脅威が明らかにした、不正建材、杜撰な設計、急がされた工期、そして隠蔽工作――。
中国の巨大国営企業が手掛けた超高層ビルは、わずか5秒で瓦礫と化し、多くの命が失われました。
遠く離れた国で起きた悲劇は、私たちにどのような教訓を突きつけているのでしょうか?
最後に、この記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。
また次回の記事でお会いしましょう!
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