経済か、愛か──中国で新たに施行された「結婚法」が女性たちに突きつけた現実とは?
皆さま、こんにちは。
本日は、現在の中国において大きな話題となっている「新しい結婚法」について、特に女性たちの視点から丁寧に掘り下げていきたいと思います。
中国社会では、現在もなお「結婚=経済的な安定の手段」として捉えられている傾向が根強く残っています。特に地方を中心に、女性たちが生活の安定を求めて結婚を選ぶという価値観は、長年にわたって一般的なものとされてきました。
しかしながら、2024年2月1日に中国最高人民法院(最高裁判所)によって導入された新しい司法解釈、通称「結婚法2.0」は、これまで当たり前だと思われていた価値観に大きな揺さぶりをかける内容となっているのです。
SNS上で広がる女性の不安の声:「何も残らないかもしれない」
ある中国人女性は、SNS上に次のような動画を投稿し、多くの共感を集めました。
「信じられますか?これからは、どれだけ家事や育児を頑張ったとしても、自分自身で収入を得ていなければ、離婚後に何一つ手元に残らない可能性があるんです」
この訴えは、多くの専業主婦や家庭を支えている女性たちにとって、他人事ではありませんでした。
「稼いだお金は個人の財産」──結婚法がもたらした根本的な変化
新たに施行されたこの結婚法では、「個人が結婚中に得た収入はその人個人の財産である」と明確に定められました。そのため、結婚生活の中で家事や育児に専念していたとしても、相手の稼ぎが共有財産として認められない可能性が出てきたのです。
つまり、「家庭を支える」という目に見えにくい貢献が、これまでよりも財産分与に反映されにくくなったということです。
住宅の名義ではなく「資金の出どころ」が重視される時代に
注目を集めているのが、結婚法第5条および第8条に含まれる「住宅の所有権」に関する規定の変更です。従来、中国では住宅の登記名義人、すなわち「誰の名前で家が登録されているか」が所有権の基準とされていました。
しかし現在では、たとえ住宅の登記が女性名義であっても、その家が男性もしくはその両親からの資金で購入されたものである場合、離婚時には男性側の所有物と見なされる可能性が高くなっているのです。
この変更により、「名義人=所有者」というシンプルな構図は崩れ、「実際に誰が資金を出したか?」という点が重視されるようになりました。
主婦の労働も「経済的価値」として評価される条項も登場
一方で、この法律には家庭内での貢献、特に家事や育児に対する明確な評価も盛り込まれています。第21条によれば、専業主婦が家事や育児、または夫の仕事を支えていた場合、その労働は経済的価値を有するものと見なされ、離婚時に金銭的補償が行われると定められているのです。
補償額については地域の平均収入を基準とし、上限は設けられていません。そのため、家庭の経済状況によっては非常に高額な補償金が支払われる事例もあるのです。
実際の判例:上海のある家庭で発生したケース
たとえば、経済都市として知られる上海では、ある男性が結婚前におよそ1000万元(日本円で約2億1000万円)の住宅ローンを組んで家を購入しました。
その後、8年間にわたり専業主婦として家庭を支え続けた女性に対し、裁判所は男性に500万元(約1億500万円)もの補償金を支払うよう命じました。男性は現金の用意ができず、借金を背負うことになったといいます。
離婚後の優先順位:民法典第87条の意味
さらに、民法典第87条では、離婚後の財産分与に関する優先順位が明記されています。そこでは「未成年の子ども」「女性」「非婚のパートナー」の順に保護されるとされており、これは女性や子どもが離婚によって経済的に困窮することで、社会不安が広がるのを防ぐための措置だと見られています。
不貞行為と贈与品に関する新たな規定
また、結婚法2.0では不貞行為や贈与に関する新たなガイドラインも導入されました。
たとえば、婚姻中に男性が愛人に贈った高額なプレゼントなどは「正当な贈与」とは認められず、離婚時にその返還が求められるケースも増えてきています。また、愛人関係や不倫が認められた場合、加害者側が財産を譲渡しなければならない義務が生じることもあります。
女性が結婚に求める条件も変化
こうした法制度の変化に伴い、中国の女性たちが結婚相手に求める条件にも変化が見られるようになってきました。かつては「持ち家があること」が最重要視されていましたが、近年ではSNSなどを中心に「身長180cm以上」「腹筋が割れている」「ロマンチックな会話ができる」といった、外見やコミュニケーション能力を重視する傾向が顕著になっています。
愛のための結婚は本当に増えるのか?
このような風潮から、「中国でもようやく“愛”のための結婚が主流になるのでは」と期待する声も聞こえてきますが、現実は決して単純ではありません。
欧米諸国で離婚率が比較的低く抑えられている背景には、手厚い社会保障制度の存在があります。対照的に、中国では専業主婦となった女性が離婚後に収入の道を絶たれてしまうリスクが依然として高く、結婚が「経済的契約」に近づいている側面が強まっています。
法律の目的は個人の保護ではなく“国家戦略”?
今回の新法には、女性たちの労働市場への参加を促進するという、国家的な意図も隠されていると指摘されています。中国は深刻な人口減少と労働力不足という課題を抱えており、2030年までには労働力が9億人を下回ると予測されています。
そのため、女性が家庭に留まる「主婦モデル」はもはや成り立たず、経済的に自立し、社会参加することが求められているのです。結婚という制度そのものが、個人間の感情的なつながりだけでなく、経済と社会の安定を保つ「戦略的ツール」として機能しはじめているのかもしれません。
あなたはどう思いますか?
こうした複雑な背景を持つ中国の新しい結婚法──それは単に「女性に有利・不利」という単純な話ではなく、社会のあり方そのものを問い直す内容となっています。
今後、結婚は「永遠の誓い」から「契約」へとますます移行していくのかもしれません。
あなたは、この中国の結婚法改正についてどのように感じますか?
ぜひ、コメント欄であなたのご意見をお聞かせください。
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