パナマでは習近平氏が2018年12月に初訪問して以降、「一帯一路」の支援プロジェクトの一環として、大型会議場や大型客船のターミナルの整備などが進められてきました。
また昨年、パナマの居住権を取得した外国人の多くは、中国人でした。
パナマに移住してきたインフルエンサーの女性は、「これほど多くの中国人が、パナマに移住している理由は簡単です。
パナマでは居住権を取得するのが信じられないほど簡単です。
30万ドル(日本円で約4500万円)の家を購入するだけで、家族3世代がパナマの居住権を取得できます。
言語条件も教育条件も必要なく、通常、2〜3か月ほどで承認されます。
この居住権があれば、家族全員がイタリア、ポルトガル、マルタを含む130を超える国と地域を自由に旅行できます。
いつでも好きなときに行けます。
さらに、パナマは米国のE2ビザ条約の一部であり、これが私がこの国を選んだ主な理由の1つです。
こうすることで、子供たちをアメリカに送り込み、質の高い教育を受けさせるための足がかりとしてパナマを利用できます。
子供たちが学業を終えたら、家族全員でスペインに2年間移住し、その頃にはスペインのパスポートを取得できるでしょう。
そして、スペインのパスポートがあれば、ヨーロッパ中を制限なく旅行することができます。
皆さんはどう思いますか?私の計画をどう思いますか。」と語りました。
近年、中米の小国パナマは、移住を希望する中国人の間で、ホットスポットになっており、
移住するための広告が中国のソーシャルメディアに溢れています。
一部の代理店はパナマでビジネスを展開するさいの、優しい税制を強調しており、
企業が自国以外の地域に業務を移転するさいの、魅力的な目的地となっています。
パナマは世界的に知られる税制度を持っており、所得税が課されません。
これは世界的に有名な「パナマの税制度」です。
パナマでは所得を海外で得た場合も課税対象になりません。
パナマに住んでいる場合、海外からの所得も非課税で受け取ることができます。
また、パナマでは法人税が課されることはありません。これは多くの外国企業にとって魅力的な要因です。
パナマに法人が登記されている場合でも、海外で得た利益に対して課税されることはありません。
多くの国が中国に制裁を課している中、パナマは中国人ビジネスオーナーに最適と言えます。
パナマは2017年、台湾との断交と同時に中国と国交を樹立し、同年11月、ラテンアメリカで初めて一帯一路に参加しました。
それ以来、パナマは中国と自由貿易協定を締結し、二国間貿易は着実に成長しています。
その戦略的な位置と開放的な経済政策のおかげで、パナマは中国投資の主要な目的地となっています。
外国投資誘致におけるパナマの拠点と呼ばれる、パナマ運河のカリブ海側入り口のコロンに設置された
コロン・フリーゾーン(CFZ)は、西半球最大の自由貿易地域です。
パナマの企業はこの自由貿易地域で輸出貿易に従事することができ、税制上の大きなメリットがあります。
輸出収入は法人税が免除され、輸出入には関税と付加価値税がかかりません。
2018年に米中貿易戦争が始まって以来、同地域は米国やEUなどの市場への無関税アクセスが可能となり、
ラテンアメリカに流入する中国製品にとって、重要な拠点となりました。
中国・国有および民間企業は過去8年間で、50億ドル(日本円で約7500億円)以上を投資、
インフラ建設、貿易、金融、海運、物流、不動産事業を加速させました。
中国商務省によると、2023年現在、40社以上の中国企業がパナマで事業を展開し、20社が地域本部を設置。
さらに、100社を超える中国の民間企業が現在、コロン・フリーゾーン(CFZ)自由貿易地域で貿易に従事しているといいます。
2018年、中国の投資をさらに誘致するため、パナマの移民当局は中国国民が永住権を取得できる特別政策を導入。
この規則では、少なくとも2年間の一時居住許可を持つ中国国民が永住権を申請できるとしています。
国家移民局は、これは中国国民にのみ適用され、中国人コミュニティから大きな関心を集めていることを明確にしている。
2023年現在、パナマの人口は約450万人、うち約30万人の中国人移民が全体の約7%を占め、そのほとんどはパナマの州に住んでいるといわれています。
さらにアナリストは、中国国家移民局の最新の数字によると、パナマの中国人の人口はすでに10%以上に上昇、
パナマ運河の米中問題が、近年のパナマへの中国人移民の急増を促しているとしています。
2月6日、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、同国が一帯一路インフラプロジェクトからの撤退を
北京に正式に通知したと発表、パナマはラテンアメリカで最初に撤退した国となりました。
ムリノ大統領は記者会見で、「一帯一路」からの離脱に必要な90日前通知を中国側に正式に伝えたとし、
同構想が同国にもたらす意義について疑問を呈しました。
また、2017年に中国側と交わした一帯一路に関する覚書について、「取り消すことを、在中国パナマ大使館を通じて通告した」と説明しました。
ムリノ大統領の発言は、パナマが「一帯一路構想」から今後、大きな利益を見出せないことを示唆しています。
2017年、パナマ共和国は、フアン・カルロス・バレラ元大統領の下で、中国の一帯一路構想に参加しました。
バレラ氏はこの時、声明で「台湾は中国に属しており、中国は1つとの認識を表明。
「パナマ政府はきょう、台湾との外交関係を断絶するとともに、あらゆる関係と公的な連絡を終了する」と述べました。
しかし、2019年、バレラ元大統領は大規模な、汚職スキャンダルの中で職を追われました。
バレラ前大統領が携帯電話を紛失した後、通話内容がメディアで暴露されたのです。
パナマが台湾と断交し、中国と国交を結ぶため中国から日本円で、約200億円以上もの大金を受け取っていたことが暴露されたのです。
アメリカのトランプ大統領が、中米のパナマ運河の返還を求めると主張するなか、
今年2月、ルビオ国務長官が初めての外遊先として、パナマを訪問しました。
ルビオ氏は、パナマ運河返還に関する条約の条項にパナマが違反しているとのトランプ氏の主張を伝えるとともに、中国の「影響と支配」を指摘しました。
ルビオ氏はその後、ムリノ大統領と会談。運河をめぐる中国の影響力を減じるための変化が直ちに見られない場合、
米国はパナマに対して行動を起こすと警告しました。
ルビオ氏の訪問後まもなく、ムリノ大統領はパナマは2026年に中国との一帯一路に関する覚書を更新しないと発表。
ムリノ大統領はその後、さらに踏み込み、パナマは2026年を待たずに、「一帯一路」のプロジェクトから完全に撤退すると発表しました。
多くの中国のアナリストは、10年以上の努力のかいなく、パナマにおける中国の影響力が今や崩壊の危機に瀕していると述べています。
しかし、今回のパナマの決定は、米国の圧力に対する象徴的なジェスチャーに過ぎないと考える人もいます。
彼らは、パナマにおける中国の影響力は深く根付いており、心の中では一帯一路を支持、両国の関係は簡単には消えないと主張しています。
中米のパナマ政府が中国の巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱する方針を明らかにしていることについて、
中国外務省の報道官は「外部からの干渉を排除し、正しい決断を下すことを期待する」と述べ、
離脱を思いとどまるよう呼びかけました。
最近、中国のSNS上では、パナマが発表した「一帯一路」からの離脱は、実際には米国をあざむくための中国の戦略ではないかという意見もみられます。
習近平国家主席が外交ルートを通じ、パナマの大統領に協定からの撤退の決定を公に発表するよう助言したというのです。
これらの主張によると、目的は、パナマの現在の状況を変えないまま、米国の圧力を緩和、
香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスを通じ、今まで通り、運河の両端にある2つの重要な港の支配を維持することを意味します。
さらに、北京のアナリストは、中国当局が、パナマのさまざまな中国および香港所有の企業に対し、
米国の抗議活動を煽動するため、特に資金を割り当てるように指示したことを明らかにしています。
西側メディアは、ルビオ米国務長官のパナマ訪問中、約200人のデモ参加者がパナマ国旗を振りながら
「ルビオ、パナマから出て行け」「国家主権万歳」などのスローガンを叫びながら首都を行進したと報じました。
機動隊が大統領官邸近くでデモ参加者を阻止したとき、一部のデモ参加者は怒りの表情で、
トランプ大統領と、ルビオ国務長官の写真が描かれた横断幕を燃やしました。
しかし、北京政界に詳しいアナリストは、今回のデモ参加者は、実際には中国から雇われ、
1人当たり100ドルほどの報酬をもらい、デモに参加しているとしています。
3月4日、香港最大の企業グループ、複合企業「CKハチソン・ホールディングス」は、パナマ運河の重要港湾を含む世界の港湾事業を、
米資産運用会社「ブラックロック」を中心とする企業連合に、228億ドル(約3・4兆円)で売却する合意を結びました。
しかし、中国の官製メディアからネットユーザーは、声をそろえてこのことを「売国行為」「国家への裏切り」だと罵っています。
「CKハチソン・ホールディングス」は、世界的な富豪の李嘉誠(り かせい氏(96)が創業、不動産を中心に多角的な事業を展開しています。
李氏は1928年に生まれ、幼少期に広東省から香港に移住。貧困の中から努力と商才で巨大な富を築き上げたました。
李氏が生まれた時、香港に移住した時も、中華人民共和国はまだ存在していません。
また、そもそも李氏の事業は国有ではありません、「国家を裏切った」と非難するのはどこかおかしな話です。
李嘉誠氏は今回の取引でかなりの実益を得ました。ハチソン・ホールディングスの港湾事業部門は、グループ内の売上寄与度が低下し、収益率も低く、頭が痛い事業部門の一つでした。
今回の取引前の港湾部門の評価金額は、約105億ドル、それを倍の228億ドル(約3・4兆円)で売却する事になったのです。
しかも、米中の間に挟まれて悩ましかったパナマ運河の二つの港を少なからぬ利益を得て、処分できたのです。
しかし、発表後、香港は蜂の巣をつついたような大騒ぎになりました。
親中メディアの香港大公報は3月13日、15日、17日に相次いで社説や評論を掲載し、李嘉誠氏を攻撃しました。
パナマ運河は1904年に米国が建設を進め、10年かけて1914年に開通、世界で最も重要な貿易ルートの1つとなりました。
米国は85年間この運河を管理しましたが、1977年、ジミー・カーター大統領の時代に新パナマ運河条約が締結。
新条約では、恒久的に中立無差別な通航が保証される国際運河であることの再確認と引き換えに、
まず1979年に主権をパナマに返還し、アメリカ合衆国の海外領土としての運河地帯を法的に消滅。
1999年12月31日にアメリカは全ての施設を返還、アメリカ軍は完全に撤退しました。
条約は、運河が恒久的に中立であり、すべての国の船舶に開かれたままでなければならないことを義務付け、
また、パナマが運河の中立性を損なう可能性のある第三者の権利や譲歩を与えることを禁止しています。
さらに、この条約は、米国とパナマが運河の安全と保護に共通の利益を共有していることを認めている。
運河の中立性が脅かされた場合、米国にはそれを守るために行動する権利があります。
パナマ運河について、騒々しい世論戦が展開されていますが、中国がこの取引を覆すカードはありそうにないのが現状です。
CKハチソン・ホールディングスは香港に本社を置いていますが、ケイマン諸島に登記する多国籍企業で、
中国本土・香港地域の売上比率が、全体の約12%にすぎません。
強圧的な手段を使えば、トランプ政権も黙ってはいないでしょう。
中国人移民が増加し、中国の企業が多く進出したパナマが、今後どのような道を歩むのかも注目されます。
あなたは、この急激な変化についてどう思いますか?
また中国とパナマ、そしてアメリカの間で繰り広げられるこの戦略的な動きが、
今後の国際情勢にどのような影響を与えると思いますか?
最後に、この記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。
また次回の記事でお会いしましょう!
コメント